Sun.23.July.2023
宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』を観る。急に思い立ったため映画館の座席予約が出遅れて、観たい時間帯の席がおおむね埋まっている。まあせっかくなので、とDolby Cinema(2000円+600円)にした。宮崎駿は「既に引退宣言をした。いまは引退しているところなのだ」といったとんちの効いた状態らしいと、どこかで読んだ気がする。なお本作はテレビなどの大手メディアでの広告を打たなかったことでも話題だが、どう宣伝したらよいのか難しい内容であった。「宮崎駿の新作である」という一点で見に行こうと思える信頼関係は得難いものだなー。
(以下本編の感想あり)
本編は宮崎駿の物語装置、特にアニメーションに対するロマンティシズムと嫌悪感がこれまでのモチーフが惜しみなく出てくることで浮き彫りになるという駿自身の業がどっしりと存在し、そこに宮崎吾郎が示してきた優しさがマイルドに溶け合っているような印象を受けた。大作家と後継者としての活躍を期待されたその子どもの関係性を想起させるシーンでの「友だちを作ります」とのセリフを大作家が自ら描く深い悲しみと和解の気配を感じ、ちょっと泣く。
冒頭の生き物のような暴力的な炎の動きは特にDolby Cinemaで観れて良かった。同じく冒頭の混乱の中でも真人が丁寧に着替える様子を描くことで真人の性格を示唆するような表現も、執拗で印象に残っている。あのシーンを描こう、と決めて描いているのだと明らかに分かるのは映画、特にアニメのおもしろいところなのかなと思う。